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それは、今代のエーデルフェルト……ヴィレッタ・ゲルト・エーデルフェルトには予想外の結果であった。
衛宮のマスターを早期に仕留めた事が、ではない。
彼女は必殺の意思でランサーを戦わせたのだから、そこに驚きが介入する余地などありはしないのだ。
故に、彼女の困惑は一つだけ…。
あのバーサーカーは何だ?
突然、全身を……いや、魂そのものを圧迫してくるかのようなプレッシャーを与えてくる。
先ほどまでは手を抜いていた?
いや、違う…バーサーカーはそこまで器用なサーヴァントでは断じてない。
理性を持たないサーヴァントが手を抜くなどと……理性がない?
「まさか…!」
ここに来て、ヴィレッタは初めて一つの結論に行き着いた。
――凶化していなかった…!?
そう。
バーサーカー…凶戦士が凶戦士と呼ばれるのは、凶化のスキルがあればこそ。
理性をなくし凶化させる事で、サーヴァント自体のスペックを上昇させる…。
「驚きましたわ……今までは理性を奪っていただけでしたのね」
「……………」
銀の少女は、何も答えない。
ただ、衛宮の死体を抱いたまま、何かを囁いているだけ。
そして、その傍らには、壊れたダムのように異常量の魔力を発し続けるバーサーカーの姿。
「…を……して…」
「え?」
「…キを…えして…」
聞き取れぬ声。
それが、自分に向けられた物だと気付いたのは…。
「シキを……返してよッ――!!」
「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」
魔力爆発と共に、バーサーカーが爆発的なスピードで接近してからだった。
――瀑布の如き踏み込み。
それを許すまいと、バーサーカーの前に立ちはだかるランサー…だが。
「邪魔ぁ……すんなぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!」
「ぐぁぁぁぁッッ!!」
バーサーカーの腕の一振りで、その槍ごと腕をへし折られ、遥か彼方へと吹き飛ばされる…!
――だけではない。
「ディバイィン…!」
【全て破壊す…】
吹き飛ばされたランサーを減速なしで追撃したバーサーカーは、ランサーのまさに目と鼻の先で…。
「バスタァァァァァァァァァァッ!!」
【魔神の拳――!!】
己が宝具を展開させた…!
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