第四章~君のいる日常~

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「バスタァァァァァァァァッ!!」 【魔神の拳――!】 爆音と、天高く舞い上がる砂塵。 それは、余波で遠く離れた位置にいるイリヤ達を吹き飛ばさんばかりの破壊力があったらしい。 視界一面を砂煙で覆われる中…。 「う…ぁ…!」 ――死んだ筈の色は、ゆっくりと目を醒ました…。 暗闇の世界から一転し、目を醒ました俺の視界に映ったのは、辺りを覆い尽くした砂煙だった。 生き返ったのか…? 俄には信じられない。 まるで夢から覚めるかのように自然に、俺は目を醒ましたのだ。 「ぇ…シ、キ?」 俺を抱えていたらしいイリヤが、驚愕の表情を浮かべる。 そりゃそうだ。 死んだ人間が生き返るなど、もはや魔法の領域なのだ。 「よう…」 「な、何で?…確かにさっき」 そう言って、俺の胸…ランサーの槍が穿った部分を見るが。 傷など、どこにもなかった。 …だけじゃない出血の痕すらもなくなっていたのだ。 蘇生なんて生易しいものじゃない。これは既に復元と呼ぶに値するだろう。 もっとも、その代償に奪われたのは…。 「(体の感覚がねぇ…のか)」 どうやら痛覚だったらしい。 自分の体が自分の物でないような感覚を覚えつつ、立ち上がる。 「――っ、とと」 体の感覚がないってのは、思った以上に厄介だったらしい。 なんせ、どれくらいの力を入れればいいのかが分からない。 面倒くせぇな…。そう思うのと同時に、視界を覆っていた砂塵は……一陣の風に蹴散らされ、その姿を消した。 途端にクリアになる視界。 だが、その先にエーデルフェルトとランサーの姿はなく…。 「逃げられちゃったわ…」 イリヤのその声と共に、猛り狂うバーサーカーもまた、姿を消した。 その静かになった空間で…。 「帰りましょう♪」 先ほどまでのが嘘のように、いつもの笑顔でイリヤがそう告げたのだった…。
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