第四章~君のいる日常~

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――何かあったのか? そう聞きたかった。 だけど、聞けなかった。 誰が聞けるだろうか? その小さな背中を震わせ、口を真一文字に結んだまま、泣くのを我慢している子供のように立ち尽くす彼女に…。 一体、誰が立ち入った話を聞けるというのか。 「分かった。――約束する」 「ぇ?」 「これからはちゃんと気を付けるって。出かける時とかはちゃんと声かけるから」 だから結局。 俺が言ってやれるのは、こんな約束だけだった。 何てことはない。 いくらセイバーに鍛えられようが、俺なんて所詮は自分の身すら守れないただのガキだったと……そういう事なんだろう。 「本当…?約束できる?」 「――ああ。悔しいけど、今の俺じゃあサーヴァント相手に自分すら守れないみたいだし…」 「………うん」 「ま、よろしく頼むよアーチャー……いや、高町さんって方がいいか?」 それしか言えなかった。 他に色々と言いたいことはあったけど、今はこれだけで十分。 差し出した右手……少し遅れて、アーチャーも手を差し伸べてきたのだから…。 「……2人の時は“なのはさん”でいいよ。みんな、そう呼んでたから」 「了解。んじゃ、改めてよろしくな、なのはさん」 「うん♪」 笑顔。 それは本当に、菜の花のように穏やかな笑顔だった。 だが、それも一瞬。 アーチャー…なのはさんは少し考えるような仕草を見せた後…。 「あれ?なんで私の真名を知ってるの?」 「え……いや、何となく分かったというか…」 「何となく?」 「あぁ。後、バーサーカーとランサーの真名も何となく分かったんだけど…」 そう言った瞬間…。 「なんでそれもっと早く言わないの!?」 先ほどまでの上機嫌っぷりが嘘のように、アーチャーが再びまくし立て始めた。 サーヴァントの真名を知ってたら対策を立てられるとか、聖杯戦争がどんなものか分かってないとか…。 まぁ、お説教である。 結果として頂いた言葉はというと。 「少し……私とお散歩しようか?」 「は?」 「大丈夫、直撃は避けるから♪」 それは散歩とは言わないんじゃなかろーか…。 なんて疑問は口に出す事もなく。 俺はアーチャーにお散歩という名の特訓を施されたのだった。 翌日、俺がグロッキーだったのは言うまでもない………とほほ。
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