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夜の帳が落ちた時分。
縁側に独り座り、俺は虚空に浮かぶ月を眺めていた。
そして、未だに俺はセイバーからの問いに答えを出せずにいる。
『貴方の戦う理由は何ですか?』
戦う理由…。
そんなものは俺にはない。
俺には背負う物なんかなければ、守るべき者もないのだから。
……でも。
果たして戦うことに理由などいるのだろうか?
もちろん、戦うに際して理由や大義名分ってのがあった方が、その戦いに意味を持ち得て、力の源にもなるのは分かる。
――理由なき争いは無意味だ。
幼い頃、祖父さんやセイバーに言われた教え。
だが、俺はその無意味な戦いに身を投じようとしている。
「……なぜ俺なんだ」
呟く言葉に返事などない。
見上げる月はただ静かに、夜を照らしていた。
耳をつく静寂に溜め息を吐いた時。
「……悩んでいるのか?」
いつからそこにいたのか。
気付けば、俺の背後には浴衣姿の祖父さんが立っていた。
「戦う理由って何なんだろーな…?」
「ふむ…」
考える素振りを見せて、祖父さんは俺の隣に座る。
「セイバーに言われたんだ…。貴方の戦う理由は何ですか?って」
「――理由、か…」
「俺はさ…アーチャーの手助けをすることが俺の戦う理由なんだって思ってたんだ…。でも、それは違う……違ったんだ」
「ほう、何故だ?」
「そこに俺がいないから…戦う理由がそれだったら、アーチャーしかそこにいない」
「それは不満か?」
「……多分、途中で裏切っちまう」
「誰を?」
「自分を…だよ。誰かに裏切られるのはいいんだ……でも、自分だけは裏切りたくない」
でも、ならどうすればいいのだろう。
思考が袋小路にはまった瞬間…。
「……アーチャーが好きか?」
「は…?」
意味の分からない質問を投げてきた。
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