第五章~従者の存在価値~

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夜の帳が落ちた時分。 縁側に独り座り、俺は虚空に浮かぶ月を眺めていた。 そして、未だに俺はセイバーからの問いに答えを出せずにいる。 『貴方の戦う理由は何ですか?』 戦う理由…。 そんなものは俺にはない。 俺には背負う物なんかなければ、守るべき者もないのだから。 ……でも。 果たして戦うことに理由などいるのだろうか? もちろん、戦うに際して理由や大義名分ってのがあった方が、その戦いに意味を持ち得て、力の源にもなるのは分かる。 ――理由なき争いは無意味だ。 幼い頃、祖父さんやセイバーに言われた教え。 だが、俺はその無意味な戦いに身を投じようとしている。 「……なぜ俺なんだ」 呟く言葉に返事などない。 見上げる月はただ静かに、夜を照らしていた。 耳をつく静寂に溜め息を吐いた時。 「……悩んでいるのか?」 いつからそこにいたのか。 気付けば、俺の背後には浴衣姿の祖父さんが立っていた。 「戦う理由って何なんだろーな…?」 「ふむ…」 考える素振りを見せて、祖父さんは俺の隣に座る。 「セイバーに言われたんだ…。貴方の戦う理由は何ですか?って」 「――理由、か…」 「俺はさ…アーチャーの手助けをすることが俺の戦う理由なんだって思ってたんだ…。でも、それは違う……違ったんだ」 「ほう、何故だ?」 「そこに俺がいないから…戦う理由がそれだったら、アーチャーしかそこにいない」 「それは不満か?」 「……多分、途中で裏切っちまう」 「誰を?」 「自分を…だよ。誰かに裏切られるのはいいんだ……でも、自分だけは裏切りたくない」 でも、ならどうすればいいのだろう。 思考が袋小路にはまった瞬間…。 「……アーチャーが好きか?」 「は…?」 意味の分からない質問を投げてきた。
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