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祖父さんの発言の真意が分からず、押し黙る。
祖父さんは今何と言った?
アーチャーが好きか、と言ったのだ。
なぜそんな事を聞くのか…。
――分からない。
祖父さんは祖父さんで、混乱する俺をニヤニヤと見てくるだけで補足はない。
「嫌いなのか?」
「いや、好きとか嫌いとか別に…」
そもそも相手はサーヴァントだ。
人間と同じ外見、心を持とうとも、それは俺のような規格内の存在では断じてない。
そう、自分に言い聞かせる。
形のない感覚が、明確な想いにならぬように…と。
「正直言うとな、儂はセイバーが好きだったよ。初めて見たときに一目惚れしてしまってな」
「……それ、祖母さんに知れたらマズいんじゃないか?」
「まぁ、な……凛には言うなよ?」
と、悪戯をする子供のように無邪気な笑顔を浮かべ、祖父さんが人差し指を自分の口の前に立てた。
だが、それも一瞬。
祖父さんは遠くを見ながら一言…。
「だから、儂は聖杯戦争に参加した。セイバーの傷つく姿を見たくなかったからだ」
「………じゃあ」
「セイバーも本当はわかってるんじゃないか?……ただ、納得が出来ないだけだろう」
だから、お前がアーチャーの為に戦うというのなら、それは立派な戦う理由だと…祖父さんの目が告げていた。
「ただし、アーチャーの為と言うのなら途中で裏切るな。アーチャーを……何より自分自身を」
「……出来るかな、俺…」
「出来ないのなら、聖杯戦争からは手を引け。まぁ、お前なら出来るさ……お前は儂の自慢の孫だからな」
そうだ。
何を弱気になっていたのか。
俺は誰だ?
そう、衛宮 色だ。
誰もが憧れる正義の味方……衛宮 士郎の孫じゃないか。
なら、やっていける。
幾度とこの体が砕けようとも、固い剣を継承した心は折れないのだから。
「なんだ…それだけのことじゃないか」
瞬間、肩が軽くなったように感じた。
ならもう大丈夫だろう。
俺は往く道を定めた。故に、あとは示すだけだ。
「色、これを」
「……デュランダル…」
祖父さんが投影した聖剣が、俺の手に渡る。
なんて重いんだろう。
心持ち一つで、武器の重みがこんなにも違う…。
「裏切るな。繕うな。欺くな。ただ前だけを見続けて、どこまでも真っ直ぐに行け」
「……ああ」
祖父さんの言葉を胸に、俺は道場へと向かった。
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