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「……………」
漆黒に包まれた夜の道場。
そこにはいつもの活気はなく、まるで空間そのものが眠っているようでもあった。
迷わずに、一歩踏み出す――刹那。
「それ以上は踏み込まないことです」
「セイバー…」
暗闇の奥から黄金を翳した王が現れた。
その身体には白銀の甲冑を纏い、その手には輝きを放ち始める最強の聖剣が握られている。
それはつまり…。
「シキ。貴方が聖杯戦争に関わると言うなら、私は貴方を再起不能にします」
言い放ち、エクスカリバーの切っ先を向けてくるセイバーの目には、一点の曇りもない。
彼女は本気なのだ。
ここで俺が進退を誤れば、確実にセイバーは俺の四肢を両断するだろう。
――それがどうした。
彼女が言うように、アーチャーの為の戦いなど何の意味もないかもしれない。
――だが、それでも。
アーチャーの為に何かしてやりたいと思ったのだ。
それが恋というものなのか、愛と呼ぶものなのかは分からない。
それは見栄っ張りで、歪で、明確な形のない信念かもしれない。
だがそれでも正しいと感じたのだ――故に。
「―――来い、セイバー…」
迷う事など何もない…!
手に握られたデュランダルの切っ先を、セイバーへと向ける。
勝てるだろうか?
感覚の失せたこの体で。
眼前に立つのは常勝の王。
如何な術を持ってしても、勝機は僅かにあるかないかだ。
「ふ…いいでしょう。ならば、貴方のその思い上がり……この私が直々に砕いて差し上げる」
聖剣の担い手は僅かに口角を上げ、その剣を音もなく構える。
エクスカリバー…。
騎士王にのみ許された黄金の剣。
それを前にして。
俺もまた、デュランダルを構えた。
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