第五章~従者の存在価値~

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「――――ッ!!」 尻餅を付く前に全力で飛び退く。 間一髪……先ほどまで俺がいた場所にはエクスカリバーが叩き下ろされていた。 もし、後一秒でも遅れていたら、俺の身体は真っ二つになっていただろう。 ――くそ…涼しそうな顔しやがって…! 焦る俺とは対象的に、セイバーは未だ呼吸すら乱れていない。 これが…こんな絶望的とすら言える状態が実戦なのか…。 なんとか着地し、急いで構えを戻す。 どうする? 彼我の戦力差は絶望的…それも笑いたくなるほどの開きがある。 純粋な剣術では劣り、唯一勝っている魔術も彼女の加護の前では何の効果もない。 ならばどうする? どうすればセイバーに一太刀入れることが出来るんだ…!? 「どうしたのです?歯応えがあるのは口先だけですか、魔術師(メイガス)」 「く…っ!」 考えろ…考えろ衛宮 色! 彼女を打倒する手段。 彼女を瞠目させる手法を…! 「そちらが来ないのなら、私から行きますが?」 「ッ!!オォォォォォ――!!」 駆けた。 後先など考えず、自らの敗北も考えず、何もかもを忘れてセイバーへと肉薄する――! 型も何もない。振り下ろすだけの幼稚な剣戟は……セイバーの聖剣によって容易く受け止められた。 鍔迫り合う剣戟の中…。 「本気で勝つつもりですか?…この私に」 「うるさいッ!俺は勝たなきゃいけないんだ!!」 「何故?」 「――あんたに…あんたに…!」 エクスカリバーをデュランダルで押し込み……。 「あんたに認めさせる為にだ――!」 弾き飛ばした。 軽く2mは後ろへ飛んだセイバーだったが、どうやらそれは、単に彼女が自ら後ろに飛んだだけだったらしい。 なぜなら…。 「くだらない!」 着地と同時に、彼女は弾丸のように飛び込んで来たのだから。 「ッ!!」 咄嗟に防ごうとデュランダルを構えるが…。 その一撃は、防ごうとした俺をデュランダルごと吹き飛ばした。 まるでゴミのように床を転がり、壁に叩きつけられる。 「ぁ――かはっ…!」 幸いにも痛みはない。 痛みはなかったが…。 視線の先には、刀身が折れたデュランダルが映っていた。
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