第六章~自身の在り方~

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第六章~自身の在り方~

あぁ、こんなにも胸が痛い。 その理由はもはや考えるまでもないだろう。 だから、後悔はここまで。 既に裏切りを宣言し、その道と志を示した以上、もはや後には引けない。 ただ叶うのならば…。 「ずっと貴女と笑い合っていたかった」 呟いた声は、深遠の淵へと消えていった。 だがそれでいい。 この最後の泣き言は誰に聞かせるべきでもないのだから。 「………固有結界…」 「そうだ。術者の心象風景を具現化する最大の禁呪…そして、これが」 「…こんなものが貴方の心象風景だと?」 セイバーの問いに頷きで答えた。 そこにあるのは、夜よりも暗い闇と静寂に包まれた世界。 空虚な空に浮かぶのは真っ赤な月。 そして、大地から伸びる幾百もの鎖だけだ。 ――何もない世界。 否、何かがあったであろう世界。 道を定め、助けると誓い…失った楽園。 故にその名を“The garden of the oath” これが……失った果てに見つけたただ一つの確かな答えだった。 「……ですが、貴方には既に武器はない」 そう言い放ち、聖剣を構えるセイバーだったが…。 黄金の剣はその輝きを弱めていた。 吸い取っているのだ。 彼女が放つ輝き…その全てを。 「デュランダル……」 既に折れ、それでも尚形を保ってくれた聖剣。 そのデュランダルに胸中で別れを告げた。 そして…。 「形成…開始」 《トレース・オン》 自らを変革させる祝詞を紡ぎて……新たな剣と成す――! 魔術回路を流れる魔力の奔流…。 それは気を抜けば衛宮 色を斬り刻むほどのものだ。 「―――ッ…ッ!」 呼吸が止まる。 出血量が多すぎたのか、視線も定まらない。 その中で、動揺することなく工程を押し進めていく。 ――早く早く早く早く早くッ!! 刹那、パシンッという音と同時に左目が爆ぜた。 痛みはない。 ただ、そこから溢れる血液が急速に生命の終わりを早めていく。 未だかつて行ったことのない魔術行使の代償かとも思ったが……違う。 失っていくのだ。 ここでは、術者である俺自身も、何かを得ようとする毎に何かを失っていくと、本能的に理解した。 ……多用は出来ないな。 まるで他人ごとのように、潰れた左目を抉りだした。
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