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そもそも、何故こんな状況になったのか。
何故、アーチャーと士郎が戦わねばならないのか…。
それは、およそ15分前に遡る。
…………
……
…
「ぇ?」
彼女が最初に感じたのは悪寒だった。
まるで丸腰のまま竜と対峙したかのような絶望感…。
そして、ざわつく心。
一瞬、敵サーヴァントが現れたかと思ったが……違う。
そうなれば、彼女が思い付くのは一つだ。
つまり、マスターである色の危機。
あのマスターの事だ。
また何か危ない橋を渡ってしまったのだろう。
衛宮邸で与えられた洋室から飛び出し、必死に彼を探した。
そして、彼女が直感を頼りに道場への廊下を急ぐ最中…。
「投影……開始」
《トレース・オン》
「ッ!?」
双剣を構えた衛宮 士郎が、そこにいたのだ。
「どいて下さい!色くんが…」
「ああ、知ってるよ」
「え…?」
アーチャーの混乱はここにきて最大になったと言っていい。
彼は今何と言ったのか。
色の身に危険が迫っていることを知っていると言ったのか?
ならば何故、彼は邪魔をする?
色は彼の孫じゃないのか?
様々な疑問符が浮かぶ中で、鍛冶師(魔術師)が答えた。
「あいつは今お前の為に戦っている。お前と戦う為に……道を示す為に戦っているんだ」
「それは…どういう――?」
「……あいつは万人を守るより、一人を守る道を選んだ―――ただそれだけの事だ」
「でもこのままじゃあ…!」
アーチャーが一歩踏み出そうとした刹那。
「それ以上は進むな!!」
「ッ!?」
魔術師の言が、弓兵をその場に縫い止めた…。
・
「それ以上前に出れば、俺はお前を討つ」
「……………」
状況が飲み込めない。
ただ、アーチャーにとってそんなことは些末な事だった。
彼女にとって大切なのは、マスターを守る事なのだから…。
迷わず、一歩踏み出した瞬間。
「ッ!!」
双剣を携えた魔術師が、一気に踏み込んで来たのだった。
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