第六章~自身の在り方~

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そうして今に至る。 「く…!」 数m先で収束された魔術と矢は相殺され、辺りに砂塵を巻き上げた。 狙いがつけられない…! 360°に意識を飛ばし、魔術師の位置を把握しようとした刹那。 肌を刺すような殺気が、上空から落ちてきた。 その濃厚な殺気に思わず後ろへ飛ぶが…。 砂塵を蹴散らし、飛来した赤光の矢はその軌道を変えてアーチャーへと迫ってくる…!? 赤原猟犬(フルンディング)。 射手が健在な限り、当たるまで標的を追い続ける魔矢。 ならば防ぐしかない。 幸いにも猟犬に籠められた魔力は多くない。 アーチャーは迫り来る猟犬を前に、しっかりと地面に足を付けて眼前に防壁を展開した…! 「くぅ…ぅ…ッ!」 防壁越しでも手を焼きかねない熱量の猟犬を、必死に防壁で受け止める。 だがその威力は、地に根を張るアーチャーを少しづつ押し下げていくほどだった…。 もし仮に士郎が追撃をかけたなら、確実にアーチャーは消えるだろう。 しかし、士郎は猟犬を抑えるアーチャーを見るばかりで追撃をかける様子はない。 当然のこと。 士郎の目的はアーチャーの消滅ではなく、アーチャーの足留めだけなのだから。 ふと、アーチャーから視線を外し道場へと目をやる。 “本当に損な役回りばかりする…” 色と戦っているであろうセイバーに、そんな苛立ちにも似た感情を覚えた。 もっと自由にしていいのに、あいつにはそれが出来ない。 60年経っても人ってのは変わらないんだなぁ…。 そんな感想を持った瞬間。 「…!」 慌てて屋根まで飛び退く。 瞬秒遅れて士郎のいた位置を焼き払ったのは、アーチャー収束魔術。 防ぎきったのか!? もう少し魔力を籠めればよかったなぁ…なんて呑気に考えながら、士郎は再び肩で息をするアーチャーへと双剣で踏み込んだ。
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