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そうして今に至る。
「く…!」
数m先で収束された魔術と矢は相殺され、辺りに砂塵を巻き上げた。
狙いがつけられない…!
360°に意識を飛ばし、魔術師の位置を把握しようとした刹那。
肌を刺すような殺気が、上空から落ちてきた。
その濃厚な殺気に思わず後ろへ飛ぶが…。
砂塵を蹴散らし、飛来した赤光の矢はその軌道を変えてアーチャーへと迫ってくる…!?
赤原猟犬。
射手が健在な限り、当たるまで標的を追い続ける魔矢。
ならば防ぐしかない。
幸いにも猟犬に籠められた魔力は多くない。
アーチャーは迫り来る猟犬を前に、しっかりと地面に足を付けて眼前に防壁を展開した…!
「くぅ…ぅ…ッ!」
防壁越しでも手を焼きかねない熱量の猟犬を、必死に防壁で受け止める。
だがその威力は、地に根を張るアーチャーを少しづつ押し下げていくほどだった…。
もし仮に士郎が追撃をかけたなら、確実にアーチャーは消えるだろう。
しかし、士郎は猟犬を抑えるアーチャーを見るばかりで追撃をかける様子はない。
当然のこと。
士郎の目的はアーチャーの消滅ではなく、アーチャーの足留めだけなのだから。
ふと、アーチャーから視線を外し道場へと目をやる。
“本当に損な役回りばかりする…”
色と戦っているであろうセイバーに、そんな苛立ちにも似た感情を覚えた。
もっと自由にしていいのに、あいつにはそれが出来ない。
60年経っても人ってのは変わらないんだなぁ…。
そんな感想を持った瞬間。
「…!」
慌てて屋根まで飛び退く。
瞬秒遅れて士郎のいた位置を焼き払ったのは、アーチャー収束魔術。
防ぎきったのか!?
もう少し魔力を籠めればよかったなぁ…なんて呑気に考えながら、士郎は再び肩で息をするアーチャーへと双剣で踏み込んだ。
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