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「はぁ~…」
通学路である坂道を下りながら、独り溜め息を吐く。
『学生の本分は勉強です。いいですね、シキ』
……わかってる。
今は鍛錬に集中する時期じゃないってことくらいは俺にもわかっていた。
でも、セイバーとの鍛錬は俺にとっては数少ない楽しみの一つだったのも、また事実…。
それが今週末までなんて…予想だにしていなかったのだ。
「最近ようやくセイバーとまともな打ち合いが出来るようになったのになぁ…」
と、独り愚痴をボヤいていた時だった。
「おい、衛宮」
背後から挨拶もなしに人を呼ぶ声がした。
まぁ、ここまで不躾なやつは俺の周りには一人くらいしかいないんだが…。
朝っぱらから面倒なやつに捕まっちまったなぁ――なんて考えながら振り向く。
「……なんだよ間桐」
俺が間桐、と呼んだ男子は俺と同じ制服を身に纏い、同じ方向へと歩いていた。
うん、つまりは俺と同じ高校に通ってるという訳なのだが…。
ついでにクラスまで一緒なのは正直勘弁願いたい。
だってのに間桐は自信満々な顔でフフンとでも言いたげに笑い、横に並んだ。
「相変わらずぼーっとしてるよね、お前。せっかくこの僕が話しかけてやってるのに」
「あ~はいはい、そいつはわざわざありがとうございます…」
面倒臭いと言わんばかりに手をひらひらさせて、間桐をあしらう。
このナルシストかつ大馬鹿の名前は間桐 周。
俺んとこの祖父母と間桐の婆さんは、昔から仲が大変よろしいらしく、そのせいでガキの頃から周とも連まされてきた。
所謂、こいつは幼なじみ、ってやつだ。
性格は極めて自己中。
女子には極めて優しいが、男には辛辣といういや~な奴である。
「まぁいい。ところで衛宮、今日うちのクラスに転入生が来るって話…知ってる?」
「知らん。興味ない。どうでもいい」
「く…。……へ~?それが美少女でも?」
「ああ。興味は湧かない」
年中盛ってるお前とは違うのである。
結局、俺は間桐の話を悉く流しているうちに学校にたどり着いたのだった――。
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