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それは、まさに太陽の如き煌めきだった。
放つ光は、彼女という高貴な存在そのもののよう。
避けなければ…。
そう思うのに、体は動かない。
まるで彼女と聖剣の煌めきに魅入られたかのように、視線は釘付けにされ、体は脳からの命令に背く。
「――――――」
刹那、セイバーが何事かを呟いたような気がしたのは、あの煌めきが見せた幻覚か…。
彼女は厳格な顔のまま、威風堂々と聖剣を振り上げ、
「エクス…」
≪約束された≫
その真名を以て、
「カリバァァァーッ!!!」
≪勝利の剣――!≫
究極の斬撃を展開させる――!
黄金の斬撃は帯となり、空間ごと斬り裂かんと飛翔する。
ならば俺は死ぬだろう。
あんなものは人間が防げるものじゃない。
加えて、俺の魔力残量も結界の維持に回した為に僅かしかないのだ。
唯一勝ち目があるとするならば…。
「安綱…」
呟くと同時に、斬撃は俺の頭上を越え………俺ではなく、固有結界を吹き飛ばした。
訳も分からず、唯一無事な右目でセイバーを見やる。
なぜ“わざと”外したのか?
「……思い出しました」
ポツリと、聖剣を振り抜いた格好のままセイバーが呟き、次いで顔を上げた。
穏やかで、晴れやかな表情。
「私の誓い。貴方が生まれた時に誓った……アーサーではなく、アルトリアとしての誓いを」
「………ち……か…い…?」
絞り出したような声に、セイバーは頷く。
「貴方を守り、貴方を導き、貴方の往く道を照らす。――私はそう誓ったのです」
「――セ……イ、バー」
ゆっくりと、セイバーが歩み寄ってくる。
そこに敵意や殺意は微塵もなく……ここに来てようやく、アーチャーと戦う事をセイバーが認めてくれたのだと理解した。
「自らの信じる道を往きなさい。険しくとも、苦しくとも……貴方の信じる正義を振るいなさい」
「…………」
「その果てに、例え貴方が世界中の人間から疎まれたとしても……私が、私だけは貴方を認めましょう」
瞬間、涙が零れ落ちた。
セイバーの願いを踏みにじって尚、セイバーは俺を信じると言ってくれたのだ。
これ以上の喜びがあるだろうか?
こうして、セイバーとの一度きりの果たし合いは幕を下ろしたのだった。
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