第六章~自身の在り方~

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士郎の声に反応して、頭上を見上げる。 そこにあった……いや『いた』のはアサシンのサーヴァントだった。 双銃の銃身に魔力刃を纏わせたアサシンは、無表情のままアーチャー目掛けて落下して来る…! ――高速移動(マニューバー)…!? いや、違う。これは…。 思考を巡らせながらも、右に重心をずらしてすぐに跳躍する。 ――塀にいたのは幻影…。 こっちが本体……ううん、これも幻影の可能性がある…! 着地の際に勢いを殺しきれず、もう一度飛んだ。 向かってくるアサシン。 だが、そんなことに何の関心も持ち合わせてはいなかった。 アーチャーの思考を掻き乱すのは、ただ一つの疑惑。 ――私、この子を知ってる…? どこかで会ったような気がする。 それがいつ、どこだったのかは……彼女には思い出せないが。 「誰……誰なのッ!?」 《A.C.S. STAND BY...》 アーチャーの問いかけに若きアサシンは何も答えなかった。 言葉など不要。 サーヴァントの本分は戦闘のみと、アサシンは一気に踏み込む…! その頑ななまでの瞳…。 やっぱり私…この子を知ってる。 ……誰だったかな。 いつも一生懸命で、誰よりも直向きで、それ故に真面目な…。 喉元まで出かかった名前がもどかしい。 名前を呼んで…そうすればきっと。 長杖の穂先に展開した槍状のA.C.Sとアサシンの魔力刃が交差し、辺りに熱風と火花を撒き散らした。 その中で…。 「何なの……アンタ…!」 アサシンが初めて口を開いた。 苛立ちの籠もった声。 彼女もまた、アーチャーと同じ疑惑が思考を掻き乱している、という事か。 ――互いに弾き合い距離を離す。 「「クロスファイヤー…!」」 間髪を入れず。 両者は自身の周りの空間に有りっ丈の魔力球を生み出し、そして…。 「「シュートッ!!」」 一斉に射出した――!! 両者の間でぶつかり合い、弾ける魔力球。 …力は互角。 だが、それはおかしい。 アーチャーとは、その名前の通り射撃戦に特化したサーヴァント。 対するアサシンとは、隠密行動に長けたサーヴァントに過ぎない。 それが射撃戦でアーチャーと渡り合うなど…。 その驚きが魔力球の制御に影響したのか。 「く…!」 アーチャーが押され始めたのだった。
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