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第七章~警告~
また、夢に落ちる。
深い闇に堕ちるように、深い闇が落ちてくるように…どこまでもどこまでも深く、遠く。
見せられたのは、様々な場面だった。
燃え盛る大地。
陽炎に揺れる瓦礫の山。
積み重ねられた大罪。
そんな世界において膝を付きながらも君臨する彼女。
白き外套は赤く血濡れ、その姿は悲惨ながらも見る者を魅せる美しさを演出していた。
太古の昔、戦乙女と呼ばれた者は今の彼女のように美しかったのだろう。だけど…。
――無理だ。
気力だけで、傷付いた体に鞭を打ち尚も戦おうとする彼女。
――その体では、戦えない。
立ち上がろうと脚に力を込める度に、全身に激痛が走るのか、彼女の表情は苦痛に満ち満ちている。
――もう、やめろ…!
気が狂いそうだ。
こうして見ているだけでも、夢は俺の中に彼女の感情を流し込んでくる。
後悔。懺悔。絶望。
積み重ねてきた罪は疾く重く、常に重圧となり彼女を蝕む。だっていうのに何故、“そんな目”をしていられるのか…。
幸せだった日々への帰依を望み、彼女がそうなるようにすればその望みが叶うというのに何故……戦う事でしか解決し得ないと思い込んでいるのか。
やはり、俺の相棒はとんでもなく馬鹿な奴だったらしい。
泣きたければ泣けばいい。辛いのなら辛いと言えばいいんだ。お前の周りには、ちゃんと理解して支えてくれる人達がいるんだろう?
だから、ほら……今からでもちゃんと彼女達に…伝えて…。
………。
……。
…。
「ぅ…ぐすっ…!」
……誰かが泣いている。
夢から覚めた胡乱な頭で、最初に知覚したのはそれだった。うっすらと目蓋を開けば――やっぱり、あの大馬鹿がそばで泣いていた。
そう。それでいいんだ。
そんな風に泣きたければ泣けばいい。
そうすれば、俺みたいな馬鹿でもちゃんと。
「どう、した…?」
こうやって声をかけてやれるから。
例えそれしか出来なかったとしても、何も知らずに人知れず勝手に泣かれるよりは万倍もマシだ。
「馬鹿だな…泣くなって」
痛覚の失せた体に感謝する。
だって感覚があったら、きっと激痛で指一本動かせない。こうして震える彼女の涙を拭いてやることなんて出来なかっただろうから…。
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