◆将来の夢◆

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私は、小さい頃から本を読んだり、歌を歌ったりとかが大好きだった。 だから勉強も、語学や音楽が得意だった。 しかし、美術や工作系は全くといっていいくらいダメだった。 ピカソやダヴィンチなどの所謂『絵画』と呼ばれるものを見るのは嫌いではない。しかしあまり絵心がないらしい。 犬を書いたのに、これ猫?と言われ、りんごを書いたらこれトマト?と言われる有様だった。 そしてそれは、大人になった今でも変わらない。 そんな私が8歳の頃。 学校で、将来何になりたいか?という勉強をした。 私はいつも、自分が大きくなったら、文章を書く仕事かミュージシャンになりたいと思っていた。 先生に、何になりたいですか?と聞かれた私は 「歌手か小説家になりたいです」と答えたのだった。 先生はクラス全員の将来の夢を聞くと、大きな画用紙を出してきて、それを配りながら 「では今日の宿題ですよ。この画用紙に、みんなが今言った将来の夢を描いてきてくださいね」と言った。はあい、とみんなはそれを受け取り、その日の授業は終わった。 さて、帰宅した私は机の前で一人悩んでいた。 当たり前である。 目の前にあるのは画用紙で、原稿用紙ではない。 作文ではなく、苦手な絵を書かないといけないからだった。 (どうしよう…) そこにただ、自分が歌手か小説家になっているであろう絵を書けばいいのだが、それができない。 頭の中には、スポットライトの下で歌う自分や、大きな豪華な書斎で、カリカリと執筆している自分が浮かぶのだが、どうしても書けない。 とりあえず自分の顔を書いた。 それはよかったのだが、続きが出来ないからベソをかいていた。 母が部屋に入ってきた。 母はベソをかきながら、絵の具を準備している私を見て 「どうしたの?」と聞いた。 「あのね、絵が書けない」私は母にわけを話した。 母は、チラと机に目をやり、それからいきなり 「まだ!!!」と叱った。それから画用紙を指差して「あんた顔しか書いてないで、絵の具出して!どこ塗るん!!」 「だって…」 「何になりたいの?」 「歌手」 「歌手になりたいのね」 「あと小説家」 わかった…と母は紙を持ってきて、さらさらと何かを書きはじめた。
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