16人が本棚に入れています
本棚に追加
私は、小さい頃から本を読んだり、歌を歌ったりとかが大好きだった。
だから勉強も、語学や音楽が得意だった。
しかし、美術や工作系は全くといっていいくらいダメだった。
ピカソやダヴィンチなどの所謂『絵画』と呼ばれるものを見るのは嫌いではない。しかしあまり絵心がないらしい。
犬を書いたのに、これ猫?と言われ、りんごを書いたらこれトマト?と言われる有様だった。
そしてそれは、大人になった今でも変わらない。
そんな私が8歳の頃。
学校で、将来何になりたいか?という勉強をした。
私はいつも、自分が大きくなったら、文章を書く仕事かミュージシャンになりたいと思っていた。
先生に、何になりたいですか?と聞かれた私は
「歌手か小説家になりたいです」と答えたのだった。
先生はクラス全員の将来の夢を聞くと、大きな画用紙を出してきて、それを配りながら
「では今日の宿題ですよ。この画用紙に、みんなが今言った将来の夢を描いてきてくださいね」と言った。はあい、とみんなはそれを受け取り、その日の授業は終わった。
さて、帰宅した私は机の前で一人悩んでいた。
当たり前である。
目の前にあるのは画用紙で、原稿用紙ではない。
作文ではなく、苦手な絵を書かないといけないからだった。
(どうしよう…)
そこにただ、自分が歌手か小説家になっているであろう絵を書けばいいのだが、それができない。
頭の中には、スポットライトの下で歌う自分や、大きな豪華な書斎で、カリカリと執筆している自分が浮かぶのだが、どうしても書けない。
とりあえず自分の顔を書いた。
それはよかったのだが、続きが出来ないからベソをかいていた。
母が部屋に入ってきた。
母はベソをかきながら、絵の具を準備している私を見て
「どうしたの?」と聞いた。
「あのね、絵が書けない」私は母にわけを話した。
母は、チラと机に目をやり、それからいきなり
「まだ!!!」と叱った。それから画用紙を指差して「あんた顔しか書いてないで、絵の具出して!どこ塗るん!!」
「だって…」
「何になりたいの?」
「歌手」
「歌手になりたいのね」
「あと小説家」
わかった…と母は紙を持ってきて、さらさらと何かを書きはじめた。
最初のコメントを投稿しよう!