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「おはようございます、先生」
「おはよう」
「先生、おはようございます」
「はい、おはよう」
(今日で何回目のおはようかしら……)
と思いながら、魔術学園シルフィーの教諭、ファリミトル・ラクトは伸びをした。
さらりと伸ばした金髪に、整った顔。銀縁眼鏡を装着していて、それなりに美人だ。着ているドレスも、彼女の美しさを際立たせる。
「おはようございます、ファリミトル先生」
そこに、漆黒とも言える黒髪の少年が現れた。
マントに隠されているが、軽そうな鎧を着込み、腰には一本の剣を帯刀していた。
「はい、おはよう……って、エマ君じゃない」
少年の名は、エマ・ナック。一言で彼をあらわすなら、天才、である。 そんなエマには、『周知の秘密』があった。
「もう、先生はやめてって言ったでしょ」
ファリミトルが不機嫌そうに言う。 エマは、殊更のように返した。
「先生と生徒の関係なんだから、そう呼ばないとまずいでしょ」
「幼馴染みなのに……」
ファリミトルの言葉を説明するならば、彼女の年齢、エマの年齢の差を先に説明せねばなるまい。
ファリミトルの年齢、16歳。
エマの年齢、16歳。
差は0なのだ。 つまり、同年齢ということになるのだが、
「あ~あ!そもそもおかしいよ!魔術の能力に秀でた人は、誰でも先生にされるなんて!」
そう、先生に“される”のだ。
彼女もまた、天才と呼ばれるほどの、優れた魔術士だったのだ。
では、なぜエマは、いまだに生徒なのか。
「ははは……。じゃ、僕はこれで、先生」
「また先生って言った!」
エマが生徒を続ける理由、それこそが、『周知の秘密』であることは、周知なので、学園の人間は全員知っている。
だが、それには危険が伴う為、ファリミトル個人としては、即刻やめてもらいたいのだが、エマには知る由もなかった。
「あ、おはよ!」
「そろそろ来る頃かと思ってたよ」
「おはよう、ペルム、ゼルカ」
エマと挨拶を交わしたのは、彼の級友であり、親友である、ペルム・ファクトリーと、ゼルカ・ファクトリーだ。
二人は双子の姉妹で、お互いに強大な魔力を秘めている。
ちなみに、落ち着いた雰囲気の漂う方が姉のゼルカで、活発そうに見える方が妹のペルムだ。
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