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と、エマが入ってきた戸が、勢いよく開き、三人が倒れ込む。
「ペルムにゼルカに、ファリミトル先生ですか」
最初に起き上がったのはゼルカだった。
「すいません!盗み聞きするつもりではなかったんです!」
律儀にも、非礼を詫びた。彼女は、そういうところはきっちりとしている。
ペルムとファリミトルもそれに続けた。
「ごめんなさい~!」
「すいません、教師として、失格です……」
だが、アンフィニは怒る様子を微塵にも見せない。どころか、彼は穏やかな表情だった。そのまま、続ける。
「聞いていたのなら、自分のすべきことが分かるね?」
「は、はい!早速準備をしてきます!」
最初に答えたのは 、やはりゼルカだった。
そして、やはり二人も続ける。
「分かりました!」
「すぐに戻ります!」
エマは、止めさせて、別の人にして、といったことは、敢えて言わなかった。彼女らなら大丈夫だろう、と判断したからである。
それは決して安易な考えではなく、客観的な観点からの評価だった。
実際(教師のファリミトルは、当然のように除外)、ペルムとゼルカの魔術成績は、教師になれるほど良かった。だが、教師になれるのは15歳からなので、14の彼女らでは、時期尚早なのである。
だがそれでも、エマが苦労するだろうことは、容易に想像出来る。なにせ(ここでも、ファリミトルは除外)、『依頼』をこなしたことがないのだから、エマがサポートしなくてはならないからだ。
それらを踏まえたうえで、エマは彼女らについてきて欲しかった。少しでも『依頼』が楽になる、ということもあるが、何よりも彼女らに魔術士として成長してもらいたかった。成長すればするほど、エマの仕事は楽になるだろう。そうすれば、念願の教師になれるかもしれなかった。
そう、エマは教師になりたいのだった。
教師になるには、大前提として魔術成績が優秀であること、とある。その点では、エマはクリアしているが、一年に一度ある教師採用試験では、数人しか採用されない。
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