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試験方法はいたって簡単。学園長を含め、学園の教師らが、これと思った生徒を教師に“する”。
昨年、ファリミトルが教師になり(当人は嫌がっていた)、エマは祝福したものの、内心では嫉妬していた。
教師になりたい。
その想いだけを抱き、エマは日々精進する。
「じゃ、一時間後に学園の正門に集合ってことで」
共に職員室から戻ったペルム、ゼルカ、ファリミトルに、エマは、一時間後にまた集合することを提案した。
「うん、じゃあ準備してくるよ!行こ、ゼルカ」
「引張らないで、ペルム。それじゃ一時間後に」
ゼルカとペルムは、準備をする為、自宅に向かった。
(女の子は準備に 時間がかかる、なんていうけど、あのゼルカがいるから、大丈夫だろう)
ペルムが時間にルーズであるのに対し、ゼルカは『タイムイズマネー』を座右の銘にしているので、集合時間に遅れることはまずない。
だとすると、心配なのは、
(ファリミトル、なんだよなぁ……)
「ん?何?」
ファリミトルが訊いてきたが、即座に、
「いや、なんでもありません」
と答えた。
言ってから、はっとなる。
「エマ君……、二人っきりの時ぐらい、敬語は止めてよ」
「あ、いや、その、ごめん」
「私も、準備してくるよ」
「ああ、遅れるなよ」
「分かってるよ。じゃね!」
(本当に分かってるんだか……)
エマは、ファリミトルが遅れずに集合するか、不安だった。
「まったく、予想どおりか」
案の定、一時間たっているにもかかわらず、ファリミトルだけが来ていない。
「しょうがないって、エマ。女の子は支度に手間取るものなんだから」
「ペルムが言うと、ものすごく説得力があるな」
「どういう意味?」
「そういう意味」
「あの」
その会話に、ゼルカが混ざる。ただしそれは、会話に参加しようとしたわけではなかった。
「ファリミトル先生、来たよ」
指差す方向を見やれば、なるほど、確かに走っているファリミトルが見えた。
「ごめーん!」
「じゃ、行きますか」
それを特に責めるでもなく、エマは壁にもたせ掛けていた背中を離した。
肩にさげている、膨れたエマのバッグが、がしゃ、と重そうな音をたてる。それを持ち直し、地下道へと向かった。
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