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「ところで、地下道へは、どこから行くの?」
ゼルカがエマに訊くと、
「マンホール」
とだけ答えた。
半ば想像していただけに、そのショックは大きくて、
(マ、マンホールぅ……?地下道に行くって言うから、汚れてもいいような服を着てきたのに、そんなところから行ったら、汚れるどころじゃすまないじゃないのよぉ……)
がっくりと肩を落として、ファリミトルがうなだれる。
それに気付いているエマは、しかしそれを無視して続ける。
「この『ガシャナク城下町』において、マンホールはそうそうあるわけじゃない。それは分かってるよな、みんな?」
『ガシャナク城』を中心に構成されている、ここ城下町は、とにかく裕福な者が多い。城に奉公している者、城下町にて自営業を営む者、出稼ぎにガシャナクから出て行く者、と実に様々なケースがある。
そんなガシャナクに地下道が出来たのは、もしもの敵襲の時、安全に町人に逃げてもらう為だった、のだが、少し前に敵襲があった時、新人兵士が怖じけづき、我先に地下道に逃げ惑った。
結果、戦況は最悪、ガシャナク城は陥落すると思われた。
そこで動いたのが、『シルフィー』の戦闘要員だった。大部分が教師で構成されていた『シルフィー隊』には、エマも加わっていた。
そして、シルフィー隊のおかげで、敵を退けることが出来た、といっても過言ではない、といった具合に大活躍だった。
それ以来、城下町にあるマンホールを含め、地下道への避難ルートは極端に減った。二度とあんな事態を引き起こさない為である。
「とにかく、マンホールは少ない。今では城下町の中でマンホールを見つけた者は幸せになれる、なんて都市伝説がたつほどね」
ゼルカが続く。
「しかも、そのせいで整備をする者がいない為……」
ファリミトルも続いた。
「目茶苦茶汚い、のよね……」
「へぇ~」
一人、ペルムだけが呆ける。
「ま、そういうわけで、僕についといで」
城下町にあるマンホールの数は、年々減らされて、今では一つしかない。ただでさえだだっ広い城下町であるのに、一つしかないとなると、それはかなりレアであると言える。
そんなレアなマンホールの場所は、すでに把握済みなエマは、迷わず進む。
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