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「エマ、ファリミトル先生とのデート、本当にやるの?」
ペルムがからかい混じりに訊いてきたが、
「そりゃやるよ。約束したんだから」
彼は憮然と返しただけだった。
「さ、僕らも行くぞ」
続いて、エマも突入。 残されたのは、双子姉妹のみとなった。
「ゼルカ、行こ」
「うん、ペルム」
「真っ暗だな……」
地下道は、一筋の光りも差し込まない。それは構造上少しでも敵に見つからないようにする為である。
ちなみに、町人たちは『クリアスコープ』という道具のおかげで、暗闇の中でも鮮明にものが見えるので問題無し(城から町人に支給されている道具である)。
「『クリアスコープ』、みんな持ってるよね。装着して」
当然のように全員装着、
「あ!」
したと思われたが、それはただ一人、ファリミトルを除いての話であった。
「まさか……とは思いたいんですけど……」
エマが恐る恐る訊くと、
「ごめーん!『クリアスコープ』、忘れちゃった!」
たまにこんなドジを踏む奴なのだ、ファリミトルという人間は。
「はあ……、用意しといて良かった」
ごそごそと、持ってきたバッグを探り、取り出した物をエマは彼女に手渡す。
「ほら、『クリアスコープ』ですよ」
「ありがとう……。でもなんで2個も持ってきてるの?」
それを受け取りつつ、ファリミトルは疑問をぶつける。
「昔からそうですから」
幼馴染である彼には、ファリミトルのことは手に取るように分かるのだ。
「ま、今回もドジを踏むんじゃないかと、色々用意してきましたから、大丈夫ですよ」
「エマ君、なにげに失礼なこと言ってる……」
「いや、別に馬鹿になんてしてませんよ?」
「絶対してる」
ははは、と軽く笑いながらその状況を傍観していた双子姉妹の片割れ、ペルムは、なにかが手の先に触れた感触を味わった。
(え……、これ、なにかな?なんか、ぐにぐにしてる……)
次の瞬間、ペルムは地面の感覚を失う。
「きゃあああ!!」
思わず悲鳴をあげる。
「な……!」
ゼルカはただ驚愕と恐怖に襲われ、動けず、
「出たか!」
エマは素早く戦闘態勢をとり、
「なんにも見えない……」
ファリミトルは『クリアスコープ』を装着し忘れ、エマに言われてやっと気付く。
「ふぅ、やっと見え……」
ファリミトルは、戦慄した。
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