アナフィラキシー ~土沖~

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「総悟」 いつもの声が俺を呼ぶ。 「なんでさァ、土方さん」 「何ってお前この状況でそれを聞くのか」 土方は、はぁと溜息をついた。 今、沖田は押し倒されている状況下にある。 まさに、今から始めようとしているときだ。 「いや、呼ばれたんで」 「呼ばれたからって、あのなぁ・・、ま。いいがな」 沖田のシャツのボタンに土方の指がかかる。肌に直接指の感触を感じて、沖田はぴくりと肩を震わせた。 「なんだ?」 分かっているくせにわざととぼけて笑う土方は、本当に意地が悪い。 「土方さん、」 「ん?」 「俺が死んだら、アンタは悲しんでくれますかねィ」 土方の動きが止まる。ひどく呆れたように、沖田を見つめた。 「お前はまたいきなり何を言い出すんだ」 「だって俺、死にそうですからねィ」 「何言って・・・、」 「アンタの毒にあてられて、死にそうでさァ」 「総、悟・・・」 沖田が唇を土方の首筋にあてがう。 「アナフィラキシーって知ってますかィ?土方さん」 耳元で囁かれて、土方の眉がぴくりと動く。 沖田の唇の先には、今朝彼が土方につけたキスマークがあった。 「俺に殺されてくだせィ、土方、さん・・・」 がりっ、と肉を食いちぎる音がして、鮮血が土方の首筋から流れてくる。 土方は、低く呻いて沖田を睨んだ。 「総悟、てめぇ何やりやがる」 「よく聞くでしょう、蜂に二回同じところを刺されると死ぬってやつ」 唇からこぼれる血を拭って沖田は悠然と微笑んだ。 「土方さんは死ぬんでさァ」 俺の手によって、殺されたんでさァ。 「じゃあ、お前はとっくに死んでんな」 土方は、笑う沖田に勝ち誇ったように笑い返した。 ーーお前はとっくに、俺に毒されてんだろ? アナフィラキシー(貴方に毒されて、死ぬ)
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