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オレはこの短い会話の中で、早坂明子に対しさらに強い思いを寄せていた。関わるなという忠告はもちろん覚えていたが、恋という感情は不思議なもの。自分が自分を抑えきれなくなる。
『キーンコーンカーンコーン』
「あ、昼休み終わっちゃった。私、今日掃除当番だから、もし家に来てくれるなら下駄箱のところで待っててね。」
「うん、わかったー。」
早坂明子はオレに新たな気持ちを芽生えさせつつ、自分の席へと戻っていった。
どうすればいいんだ…。いや、本当はもう答えは決まっている。この感情はどうしようもできない。やばいことに巻き込まれそうになったら、すぐ逃げればいいんだ。
行こう。
そんなことを考えているうちに五時間目の授業が終わり、残り一時間となった。休み時間になると、隣からいつも通り陽気な声が聞こえてくる。
「優作ーなんかずっと考え事してたみたいだけど、なんかあった??」
またしても良太の十八番、勘の良さを披露してきた。
「別になんでもないよ。」
運良く早坂明子と話しているところは見られていなかったらしい。今回はなんとかごまかしきれるだろう。
早坂明子の家に行くと決めた瞬間から、良太にはこの件に関して一切話さないことを決めていた。余計な心配をかけてしまうし、反対されることは目に見えていたからだ。
良太に今日は一緒に帰れないことを告げ、色々とごまかしている内に、気づいたら放課後になっていた。
オレは下駄箱で一人、早坂明子を待った。
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