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もう一度ひんやりとした玄関に耳を当ててみる。
やっぱり聞こえない……。
「何やってんだ?お前」
突然後ろから声がして、僕はビクッと身体を震わせて振り返った。
そこには仕事を終えて帰ってきた、アキラが怪訝そうな顔して立っていた。
「えっいや、あの~」
反射的にしどろもどろになる。
「あ?なに?」
「別に何でもないケド……」
挙動不振な僕に、余計アキラの眉間のシワが深まる。
「……覗きか?」
「違っ!違うよっ!!……何か、お客さん来てる見たいだよ…」
「客?俺に?」
「う、うん……」
僕の不振ぶりと心当たりのないような訪問者の話しに、首を傾げながらアキラは玄関を開ける。
途端、アキラの横顔が酷く強張ったのを僕は見ていた。
アキラの纏う空気が、明らかに怒りに満ちている。
スッと投げられた視線が僕は怖かった。
見つかってはマズイものが見つかってしまったような感覚。
「ユースケ部屋入ってろ。いいって言うまで出るなよ」
「……うん」
僕の返事を聞くと、アキラは僕を廊下に置いて部屋に入って行った。
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