運命の出会い

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バーのマスターですら、ワイングラスを布巾で拭き取る作業を永遠と繰り返し、見てみぬフリだ。 隣にいる中年に差し掛かったポニーテールの女の店員も、棚に置かれた酒類を触る真似をして、時間稼ぎである。 誰も助けてくれない。 店内の机に肘を付き、モヒカンという奇抜なヘアースタイルの若い女はタバコを口にくわえ、異様な目つきでこちらを見ている。 周囲を見渡せば、全員が女を狙った輩のようにも映った。 悪だくみな態度であるなら、何をされるか分からない。 そんな不安感を募らせ、女は恐怖心で声がかき潰れた。 だが、そんな中他の輩とは違った若い男だけが女をじっと見つめていた。 澄んだ瞳、長めのダークブラウンという東欧人のハーブっぽい出で立ちのメルセンは清らかなイメージの青年に見えた。
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