小さな

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『おい?』 柳が動かない。 近づいて顔を覗き込んで驚いた。 『柳?大丈夫か…?』 青い顔で固まっている 汗までかいて。   今まで何されてきたんだよ お前にとって あのたった一言は そこまで重かったのか。   動けないでいる柳の頭を ポンポンと撫でてやった。 『頑張ったな』 そういうと 柳は泣き出した。   俺の裾を掴んでうつ向く柳は 本当にちっこくて すごく弱い でも さっきの柳はカッコよかった。   裾を掴んだまま震える手 落ち着くよう暫く頭を撫でていた。 ふと柳が気付いたように俺の胸に顔を近づけてきたから何かと思ったら 『北河くん…くさい』   コイツ…。 言葉を失った俺をよそに 柳は手を伸ばして学ランの両ポッケを軽く叩いた。 確かな手応えを感じたらしく手探りで煙草とライターを取り出す。 『ほぁー。』 どういう反応だ、それは。   柳は好奇心が旺盛らしい。 『北河くんいけない子ですよー?』 なんて言いながら煙草を一本くわえて 吸っているような仕草をして見せる。
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