小さな

5/5
前へ
/63ページ
次へ
俺は意地悪を思いついた。 『それ加えたまま息吸え』 え?とたじろぐ柳。 けれど言った通りにし始めたので すかさずライターで煙草に火をつけた。   !! 『ケホケホッ』 好奇心と素直さが仇となったな。 笑いを堪えて、柳が落としそうになった煙草を取り上げた。 窓辺に行って吸いながら 『お前も吸ったから共犯だなぁ』 とか言ってみた。 『なんでよ~…』 柳は苦そうに舌を出した。 なんて愉快なんだ。   吸い終わって そろそろ帰るかと扉へ近づくと 呼び止められた。 『ねぇ…いつもどこで聴いてたの?』 振り向くとピアノからひょこっと頭を出している柳。 『あー。屋上だよ』 そう言って扉を開けた。 『あの』 柳はそれから下を向いて黙りこんで なんだと待っていると 俺を見て言った。 『嫌でなければ、もっと近くで聴いててよ』 笑ってしまった。 驚いて嬉しくて 柳の真っ赤な顔が可愛すぎて。   お前が懸命に守った この時間の中に 俺を許してくれるのか   まぁ、コイツにとって 俺みたいな奴でもちゃんと友達らしい。 今はそれも悪くない。   『おー。』 少しの照れを隠しながら 音楽室を後にした。   明日からが楽しみだ。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加