一緒の時間

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『柳、あの曲弾いて』 『あれ好きだねぇ』 放課後は音楽室で一服が日課となった。 煙草を取り出す度に柳に『めっ』と言われる。 扱いがまるでガキじゃねぇか…?   柳とこうして過ごすうちに 色々わかったことがあった。   柳は一人っ子で母親が大好きな事。 家にはピアノがないから音楽室しか弾ける場所がない事。   『お前ピアノどうやって習ったの?』 『前近所にピアノを弾くお姉さんが住んでて、いつも聴いてたらやってみる?って言われてね』 教えてもらえることになった時はすごく嬉しかったと 柳は楽譜を触りながら微笑んだ。   ピアノには相変わらずぐちゃぐちゃの楽譜を立て掛けている。 『これはお姉さんが作った曲だから 世界に一つしかないの。私の一番お気に入りの曲。北河君がいつも聴きたがるのもこれなんだよ?』 素敵な曲でしょうと嬉しそうに言う柳。 『良い曲だな』   誉めると柳はくすぐったそうにして またピアノを弾き始めた。   本当にピアノが好きなんだろう。 気持ち良さそうに弾く柳が 俺には少し眩しかった。
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