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放課後、俺はいつものように屋上に入り込む。
外で部活をしている奴らを横目に
もうそろそろか、と腰を下ろした。
少しもしない内に
ピアノの静かで穏やかな旋律が聞こえてきた。
これを聞きながら一服するのが最近の俺の日課。ピアノを弾く本人は落ち着いた曲を好むようなので、子守唄程度にきいていた。
今日も耳をすませつつ
良い気持ちで寝に入ろうとする俺に聞こえたのは
耳をつんざくような音だった。
いつもとは違う、ザワつくようなそれに驚いて身を乗り出して見てみる
が、いくらすぐ下が音楽室でも見えるわけはなかった。
機嫌でも悪いのか?
まぁそんなこともあるかと大人しくしていた。
けど乱暴で怒っているようなそれに混じって
聞こえるか聞こえないかくらいの嗚咽が聞こえてきた。
泣いている…?
俺は妙に気になって、音楽室を覗いてみることにした。
相変わらず激しいピアノの音。
ガラガラ。
こっそり扉をあけたはずだったが古いせいか盛大な音で俺を迎えた。
勿論ピアノの主も気付いたらしく音が止まる。
『うぜぇ…』
扉に向かって吐いたつもりがピアノの主が謝ってきた。
『あの、ごめんなさい…うるさかったよね』
『あ、いや…違うから。邪魔し』
謝りながらしれっとピアノの方へ近づいてみると
こじんまりした女がいた。
『あ?柳?』
ピアノを弾いていたのはクラスメイトの柳だった。椅子にちょこんと座って俺を見る。
柳は小さくて結構可愛い顔をしている。クラスの野郎の間では好評で姫だのお嬢だのと言っていた。だが、他の女がそれを良く思わなかったようで柳はいじめの標的になってしまったらしい。
最近になっていじめは大分おさまったみたいだが、柳は見る度一人だ。
だせぇよな。ガキってのは。
…俺もガキか。
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