小さな

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『うぉ』 だせぇ声が出た。 ついこんな声が出てしまったのは 扉を開ける音が原因らしかった。 誰か入ってきたらしい。   柳が緊張した顔で扉の方を見ている。   俺のところからは顔が見えなかったが ピアノの下にいくつかの足が見えた。 …。   『うるさいんだけど。ウザイ下手くそ。』 あぁ、やっぱりな。 柳を良く思わない女共。 俺には気付いていないらしかった。   『…ごめんなさい。』 柳が謝った。 女共は柳の言葉を無視して口々に文句を言う。   うるさいわけがない。 柳のピアノは上手い。 微かに震える小さな背中を見て 俺はイラついてきた。   耐えかねて立ち上がろうとした時 柳が後ろ手で俺をいさめた。   やめろ、と言っているらしい。 俺は少し迷ったが 大人しく従うことにした。   文句は続く。   柳はずっと黙って聞いていた。
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