小さな

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『とりあえずピアノ禁止ね』 女共の誰かが言った。 は?ふざけんな。 そう言いそうになった時   柳が初めて反論を口にした。 『嫌。』 たった一言。 それでも柳は必死だった。 それだけ、譲れないものなんだろう。   けれどその発言は 上手い具合に女共の怒りを買ってしまった。 『は?』 死ねボケ。調子のんな。 汚い言葉を吐きながら近づいてくる。 『ブスが…』 柳の近くまで来たとき 女の言葉が途切れた。 ようやく俺の存在に気付いたらしい。   『ブスが、なんだ?』 聞き直したが返事はなかった。 驚いた顔で俺を見る。 ブスはてめぇらだ。   『え…北河くんじゃ?』 一人の女が言った。 コイツ確か 『お前何してんの? サイテー。彼氏泣くな。』 仲の良いダチの彼女だったはず。   女は何も言えなくなって顔を歪めた。 はい当たり。 ダチと遊んだときに話したこともあったが こんな事をするような奴とはな。   『彼氏には言わねーから帰れよ。』 女は何か言おうとしたようだったが 俺の不機嫌な表情を見るとバツの悪そうな顔で他の奴を連れて帰って言った。   あいつダチに相当惚れてるから 柳に下手に絡んだりはしないだろう。 あまり良い解決ではないけど もう柳は泣かせたくないしな、うん。
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