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血を啜り合う音が響く。
絡み合いながらお互いを貪り唇を赤く染め上げる。
赤い枕に赤黒い血液が落ちた。
噎せ返るような血の薫りが酷く落ち着く。
何度でも何度でも
僕らは罪を犯す
何度でも
何度でも――
「アベル…喩え僕だとしても…君が他者にその躯を許した事…赦せないな…」
皮膚に食い込む兄の爪痕から薄ら血が滲む。
赤眼が狂喜に歪み、僕を蝕んでいく。
「アベル…君を殺すのも肌を重ねるのも…僕じゃなきゃいけないよ…」
“そういう定めだからね”
呟いた言葉が深く胸にのし掛かった。
「僕らはひとつで…」
僕らはふたつ
定められた運命の輪の中で僕らはもがき、溺れ…そして穢れていく。
愛しくて憎い唯一無二の存在を血塗れの両腕で抱きしめ、戯れに興じた―…
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