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† † †
罪の間には兄の姿はなかった。
僕らの為だけの赤い部屋は以前と変わらぬままそこに存在しているのに。
兄だけがいない
幾ら待っても現れない
僕は無意識のうちに祈っていた。
僕が殺したのに…
この手で掟に背いたのに…
兄に逢いたい
兄と交わりたい
兄が欲しい
光の届かぬこの部屋では時の感覚が解らない。
――僕は誰に祈っているのだろう?
それすら解らないまま、
懇願するように兄を求め続けた。
「カイン……カイン…」
自由の代償は大きすぎた。
僕の片割れ
僕の片翼
『…僕らはひとつで…』
「…僕らはふたつ…」
首筋に当てた刃をゆっくり引いた。
烙印から溢れ出る血を掬い舐めたら兄の味がした。
――ああ…
此処にいたんだね…?
『ずっとずっと一緒にいよう…』
烙印を赤く染め上げながら倖せそうに笑う兄。
そうだね、カイン
ずっとずっと…一緒にいよう?
不変の定めを二人で生きていこう?
永遠に―――…
-END-
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