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「見ーつけた」
暗闇に浮かぶチェリーレッドの瞳。
ああ、またゲームオーバーだ…
今度は僕の妹だったんだ。
「ふふ、アベル…隠れるのが上手になったね…?」
顔も声も僕の妹のまま。
囁きながら笑うカインの言葉が纏わりつく。
ロンドン特有の生ぬるい風が足元を撫でた。
霧が僕らを包み込むように周囲の景色を霞ませていく。
「アベル…逢いたかったよ…愛しい愛しい僕の方翼…」
僕の胸に突き立てた短剣を最奥まで捩じ込ませ、唇が重なる。
滑り込む舌の感触がした時、ずるりと短剣が抜かれた。
真っ赤に染まった顔を悦に歪ませたカインは、
自らの胸に短剣を突き立てた。
「病めるときも健やかなるときも…死すらも僕らを別つことはできない…」
誓いの言葉を呟くカインの口元から鮮血が溢れ出している。
僕が最期に見たものは、
罪の証の赤眼と零時を告げる時計塔だった――
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