RoundⅠ

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幾度繰り返したのだろう。 僕はまたエデンの罪の間に横たわっていた。 楽園にて唯一光の届かぬこの部屋は、僕らの為に用意された空間。 僕と兄の為だけの。 「アベル…起きた…?」 爛々と輝く赤眼が僕を見下ろす。本来の姿に戻った兄の瞳に、同じ顔の僕が映る。 はだけた兄の首筋に双頭の蝙蝠が覗く。 楽園を追放された僕らに捺された烙印。 「アベル…今回は頑張ったね…百年もかかるなんて思わなかったよ…」 しか、だろう? 束の間の自由は脆くもまた崩れ去った。 僕らはひとつで 僕らはふたつ。 片翼がなければ翔ぶことはできない。 両翼が揃えば籠の中。 ならば僕らはどうして存在するのだろう。 僕らの存在意義はなんなのだろう。 お互いを食い潰し合い、 お互い以外の血を貪ることをよしとせず、 罪を重ね罰を受け…悠久の時を廻り… 生きていると云えるのだろうか? 弟殺しの罪を背負う兄 片翼をもがれ堕とされた僕 「アベル…君さえいれば…僕は何も要らない…」 狂ったように僕を求める兄を見上げる。 躯に力が入らない…失血し過ぎたか… 僕の肚で暴れまわる兄をただ受け入れ続ける。 背徳行為と解っていても止めることは出来ない。 喩え己の罪を深めるだけだとしても―――  
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