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南楓は一軒の家の前に立ち尽くしていた。
あまり大きくはないが、一家族が暮らす程度なら十分であろう広さ持つ二階建て。赤い屋根に、豪奢でもなく質素でもない門造り。
総じて一般家庭の領域を出ない、いわゆる普通というのがその家に対する彼女の感想だった。
「ここが真紀の家か……」
楓は人知れず呟いていた。
実を言うと、もうかなり長い付き合いになるのに、親友の真紀――藍原真紀の家に行くのは、意外にも初めてのことだ。
楓にとってもそれは不思議だった。
今まで何度も行く予定があったのに、何故か全て直前になってキャンセルとなるのだ。
まあだからといって困るわけではない。楓は漠然と「きっと私は真紀の家と縁がないだろう」と思っていた。
けれど。
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