835人が本棚に入れています
本棚に追加
今回ばかりはそんな風に言ってられない。
なにせ真紀の力が――正確に言うならそのお兄さんの力が必要なのだ。こちらから出向く必要があった。
楓はインターホンを押した。
声が返ってくるの待っていると、それより先にドアが開いた。一瞬、無用心だなー、と楓は思ったが、それが真紀だったと納得する。
彼女の親友は誰にでも明るく、人懐こい性格をしているのだ。天真爛漫という表現がよく似合う。
「やぁーやぁー待ちわびたよ楓」
笑顔を携え現れた真紀の口調は、どうもオッサンのようだ。楓はわずかに苦笑しつつ、「こんにちは」と小さく頭を下げた。
「ん、こんにちは? …………ああ、そうか。もうお昼だったね。さっきまで寝てたから気づかなかったよ」
「寝てたって……もう一時だよ」
最初のコメントを投稿しよう!