気付いたときは、見知らぬ土地で

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「約束」 目の前にいる少年が言った 「そうだね」 その少年の隣にいる少女が頷いた ───うん 私は心の中でそう言って、笑みを浮かべて頷く 「三人でずっと一緒」 少年のその言葉がずっと一人でいた私にとってとてもくすぐったい 「いくつ時が過ぎてもずっと一緒だよ」 少女が満面の笑みで私に抱きついた その言葉と行動が妙に気恥ずかしく、それでいて、とても嬉しい そんな思いを持ってその少女と同じく親友と呼べる少年に真っ赤な顔で困ったような表情を作って向き直り、助けを求める 少年はただ笑って見るばかり 「だから」 抱きついている少女の声が湿り気を帯びる 「また、会えるよね・・・?」 肩口が少しずつ、濡れるのを感じながら、喋ることのできない私は肯定の意味を持って抱きしめ返す ───きっと、会えるから泣かないで 言葉に出来ないのがこんなにももどかしく感じたことはない ───私が無理でも、次の私が輪廻の果てに、約束を果たしに会いに来る    だから大丈夫    なんど輪廻を回ろうとこの思いは変わらないから、大丈夫 その思いのすべてが伝わるように、少女を抱きしめる力を強める 「・・・───、そろそろ」 少年が私の名前を呼んで、最後の時間の終わりを告げる 私と少女は離れて、お互いの顔を見つめ合う 少女の顔は、涙の筋がいくつもの出来ていて、目が真っ赤 それでも笑っていた 私も似たような顔なのだろうか 振り向いて、そこに佇むものを見やる 帰るための、残してきた大切なもの達の元に帰るための、扉 それに手をかける 「じゃあね」 にこやかに笑って少年が手を振った 「また、ね、───」 少女がまた涙を流して私の名前を呼んだ 彼女がつけてくれた二番目の名前 その名前が今の私の本当の名前 私は目一杯の笑顔で手を降り、扉を押し開けた そこにあるのは純粋な闇 その闇に身を投げる 長く、銀に輝く髪が闇に舞う 一切の音が切断された 意識が闇に沈んでいく ───・・・約束 消えていく意識の中 ───約束を、守りたい 思い返す ───だから 時間が足りない ───だから、私は 意識が沈む ───私は、もう一度・・・ ───もう一度、この世界に立とう    約束の為に
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