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「えーっと、ここは玄蛇亀の荒(くろじゃきのこう)。王都のすぐ北に位置する玄武を祀(まつ)る場所だよ」
「玄蛇亀の荒? なにそれ」
零が聞くとツキはすごく驚いたような反応をした。
「えっ!? 知らない? 玄蛇亀の荒を?」
「それが、どうした?」
零も戸惑ったように返す。
「・・・聞いたことぐらいはあるよね」
「聞いたこともない」
「・・・記憶喪失?」
「なわけあるか」
「じゃあなんで知らないの? 学校初期に教えられるとこなのに」
そう言って首を傾げるツキを零は胡乱気(うろんげ)に見る。
「はぁ? んな日本名みたいな場所は地球のどこを探してもないと思うぞ」
「・・・地、球?」
ツキは思い出すように呟き、ああ、と息を漏らした。
「キミ向こう側の人か。懐かしいなぁ、地球」
少し嬉しそうに何度も頷きながらツキは言葉を紡ぐ。
「そっかそっか。なら知らなくて当たり前だよ。
うん」
「なにがだよ」
零が少し不機嫌そうに言うとツキはやはり、嬉しそうに、
「つまり、ここがキミのいた世界とは別世界だってこと」
そんなことを言った。
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