けっきょく僕は僕なのです。

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     ◆  ◆  ◆    そういう時は次から私の名を出せ、なんてよくわからないアドバイスをいただき、僕は肩を怒らせながら去ってゆく奈々乃を見送った。 何でも、「音川死なす」とのこと。アーメン。 「まあ、僕にはどうでもいいけど」 嘘。本当はけっこうどうでもよくない。 なにせ、僕は昔、てかほんの一ヶ月ほど前まで。僕は奈々乃と付き合っていたのだ。 しかもその仲は別に、喧嘩したとか愛せなくなったとかの月並みな理由でなく。一方的ですれ違いだらけの無理矢理な自然消滅という形で。 だから当然、いや、向こうはどうだか知らないが僕は今でも彼女のことを好いている。これが果たして友情なのか恋愛感情なのかはまだよくわからないけど。 でも、ただ何となく、向こうもそう思っているんじゃないかとか思っている僕もいたり。 自分勝手なナルチシズムだな、なんて自己嫌悪。 ええ。相も変わらず、僕は僕のまま。 まったくもって進歩のないことで。  
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