851人が本棚に入れています
本棚に追加
/280ページ
「まあ、せっかく来たんだ。ゆっくりしてけや」と言いながら僕の両肩をガッシリと掴み、「それからちょっと訊きたいんだがよー」そっちのが本題と見た。
「お前、きーちゃんがどこに行ったのか知らねえ?」
「知らねえ」
知ってても教えないけど。
あ。ちなみにきーちゃんとは僕の妹さんのことである。ちょっと前までその片鱗すら見せなかった辺り後付け設定っぽいけど後付けなんかではなく実の妹である。
……誰に説明してんだ僕?
「本当に知らないのか?」
「しつけーよじじい」
「まだ二回しか訊いてねえぞ」
「こっちはもう何ヶ月も知らないって言ってんだよ」
そんなんだから溺愛してた孫に家出なんかされるんだ。
ざ ま あ !
なんて本心を露骨に口走ったりなんかはせず、いちおう同情。
「きーちゃんも大変だわなぁ……」
あ。この祖父様に同情する気なんて微塵もないのはあしからず。
最初のコメントを投稿しよう!