けっきょく僕は僕なのです。

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     ◆  ◆  ◆    「ひーくん君、キミ、七夕君と付き合うことにしたんだって?」 「けっこう古い情報ですね」 すれ違い様にそんなことを言われ、僕は通路のど真ん中で振り返りながらそんなことを言った。 しかし、訊いてきたであろう白衣の貴女ははるか先に。なんか今、他人から見たら僕がイタい子に見える状況。 その場に止まるにしてもやり切れなさばかりが募るので、僕と背の変わらないグレーのニット帽と白衣のそいつの後ろ姿を追う。 「ということはもう別れたのか」 「結論に導くまでが早すぎやしませんか?」 いや。別れてしまったのだけれども。 「まあ。君の言葉を借りるなら、どうでもいいけど、な」 「……さいですか」 そう言って、何だか居心地が微妙に疼いてきた頃にやっとこっちに向き合ってくれたグレーのニット帽に赤い眼帯で左目を隠す女性。 彼女、神檀家 環河(かんだんか かんか)はこんななりでも教授を勤めているというのだから驚きだ。  
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