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「音川め、余計なマネを……」
何が余計なマネだったのかは知らないが、何かが奈々乃の逆鱗に触れてしまったらしい。
「今度あったら、――叩き潰し切ってくれる」
……叩くか潰すか切るかのどれか一つじゃダメなんだろうか。
怒った時の彼女を止めるのはひ弱な僕には無理。だって僕、生まれたての小鹿並みに弱いもの。
いちおう音川君のためには口添え程度の弁明くらいはするべきなんだろうけど、友達がいなく、しかも奈々乃にはなかなか逆らえない僕はそんなことをしなかった。
むしろ、
「そうだねー。次に逢った時にはそうしてあげたらー」
「おう」
無責任にも焚き付けることにした。
「今度あったら、――叩き潰し切ってくれる」
少し前にもまったく同じようなセリフを聞いたなーなんて思いながら、僕は微苦笑を浮かべる。
やれやれ。このまま奈々乃がさっきのことを忘れてくれますように、なんて自分勝手なことをまだ見ぬ神様に祈りながら。
「ところでひーくん、何故ちみっ子は彼女なんだ?」
「…………えっと……」
そして一瞬にして神様に裏切られた僕。
――なんて、どうでもいいけど。
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