ネガイ

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「ふふっ……」  買い物を済ませ、俺は上機嫌で帰路に着いた。  手には小さな箱。その中には前々から彼女――――小柳美沙が欲しがっていた指輪が入っている。  美紗はここの繁華街を通る度、店のショーケースに飾られているこのペアリングに目を奪われていた。  誕生日が近付いてきたこともあり、今まで溜めていたバイト代を奮発して今日彼女へのプレゼントとして買ったわけだ。 「これ見たらどんな顔するかなぁ」  指輪を渡された時の美沙を想像する。それを考えるだけで頬が緩んでしまう。  美沙が俺――――田崎昇にとっての大切な人になって既に半年。最初はぎこちなかった交際も、今では周りにバカップルと称されるほど円滑になっていた。 (このまま行くと更なるバカップルに発展――――)  していくのかなぁ、などと考えて歩いていた、その時だった。  自分のすぐ傍からブレーキ音。  その方向へ顔を向けようとした瞬間―――― 「え?」  体が、宙に浮いた。
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