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もう怖い。どれくらい怖いかというと、ものすごく怖い。
抽象的だが、あいにくこの怖さを表現できるほどのボキャブラリーはない。
階段の踊り場に着く。
等身大の鏡が壁に掛けられていて、この上なく怖い。
この学校は肝試しのためにつくられたのではないかと思えるほど怖い。
もう嫌だ。
壊すしかない。
何を?
精神をだ。
「ヒャッハァァァァァァァァァァァァァ!私は風になるぅぅぅぅぅっう♪♪」
駄目だ、声が響いて余計に怖い。それに、階段につまずいて転びかけた。
その拍子に懐中電灯の蓋が壊れ、電池が転がり落ちる。
明かりが、消えた。
最悪だ。
運がいいことだけが俺の取り柄だったのに、ついに運に見放された。
「ヒヒヒ……ヒヒッ……」
俺は小さく笑い、フラフラと歩き出す。
あ、目を閉じれば怖くない……
「いってぇぇ!」
ここが階段だということを忘れていた。
もちろん転んだ。
もう嫌だ。
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