覚醒

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『いらっしゃい。馨』 『……』 『わしがついておる。それにアナがいるんじゃ誰も邪険には扱わんじゃろ』 廊下を歩いていると通りすがる人が馨を冷ややかな目で見つめる。 馨は物心ついたころから常にこの目で見られていた しばらく歩くと急に梛が立ち止まる。 馨が、目をやるとそこには鎹が立っていた。 馨が一番会いたくない人。 馨を自分の子ではないと言い放ち、馨を虐待していたからだ。 『馨』 『鎹様、何ですか?』 『い…いや』 鎹は、ある事をきっかけに馨にあやまろうと何度も馨と接触するが、いざとなるとなかなか言葉に出来なかった。 梛は、それを知ってた。 だから、わざと立ち止まった。 しかし、いくら待っても鎹は口を開かない。 仕方なく梛は、馨を連れ自室に戻った。 『ここなら誰もこぬだろう』 『ばあちゃん、久しぶり!』 ようやく見せた笑顔に梛は安堵した。 梛は、いつも一人暮らしが辛いのではないかと心配していた。 しかし、馨にとっては、この家に居続けるほうが辛い。 梛は、それを知っているから戻って来いとは言えなかった。 『それより、ばあちゃん、なんで俺を呼んだんだ?』 『アナが本当にお前のところに行ったのか確認したくてな』 『アナは確か……』 アナは、初代当主 犲哦様のDoll。 犲哦かその生まれ変わりの者だけにしか操ることの出来ないDollだと梛は馨に告げた。 『ちょっと待って、生まれ変わりの者だけって…』 『そう、おぬしは犲哦様の生まれ変わりじゃ』
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