始まり

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俺達は葬式に来ていた。 前には棺が置いてあり、その上方に大きな写真が飾ってある。 母の写真だ。 夫婦喧嘩をしていた頃の表情とは違い、柔らかい表情だ。 「兄貴…この母さん、幸せそうだな…」 次男の龍臣が震える声で言った。 横目で龍臣を見ると真っ直ぐ母の写真を見ていた。 俺は「あぁ…」と返し、龍臣から目を離そうとしたとき、龍臣の目から一粒の涙が流れた。 普段泣かない龍臣が泣いた。 俺はそのまま前を向き、龍臣の頭を自分の肩に抱き寄せた。 龍臣は驚いたのか、ピクッと体が震えた。 だが、また違った意味で震え、肩が湿ってくるのが分かった。
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