6461人が本棚に入れています
本棚に追加
俺はかなり回ったが、なかなか見つからなかった。今度こそ居ると思い、力いっぱい屋上の扉を開けた。
「あっ!いたいた、やっと見つけた」
俺は額の汗をハンカチで拭い、姫子に近付く。屋上に居て、扉から一番離れた所で景色を眺めているのか、まだこちらに気づいていない。
「すみません。途中で逃げてしまい」
姫子は物音で分かったらしいが振り返らず喋る。姫子の隣に行き、同じく景色を見始める。屋上のこの風…何か安らぐよね。
「いやいや、それよりも何で逃げたか教えてくれるかな?」
「はい。自分の裸を見せる時は大切人の前でしかいけないと、昔からおばあちゃんから言われてきました」
意外とあっさり応えてくれますね。時々姫子を横目で見るが、景色を見ていて一切俺を見てこない。顔を合わせずらいから、仕方がないかな。
「おばあちゃんが正しいよ。今の時代は少し歪んでるから……けど、俺はこの時代に生まれて来て良かったと思うぜ……ってか、思わなくちゃ人生楽しくなくなるぜ」
最初のコメントを投稿しよう!