『おひめさまが泣いた』

6/10
前へ
/32ページ
次へ
それからぼんやりと午後の授業を受けて放課後。 その間、彼はいつもと変わらないず、分け隔てなく優しく笑みをクラスメイトに向ける。 いつもと変わらない。 掃除当番で残る私とは反対に、先に帰る薄情な友達を見送りながら掃除を済ませていく。 同じ掃除当番だったらしい彼は黒板を綺麗に拭いているのが見えたけど、会話は勿論ない。 誰もいなくなった教室。 特に話す事があるわけではなく、床を掃く箒の音と黒板消しをたたく音だけが耳に響く。 「小人さんさあ、職員室から帰るときに渡り廊下通った?」 不意にかけられた声と、頭を見透かされたような言葉にドキッと胸が高鳴った。 勿論恋愛的な意味ではなく。 「うん」 別に隠す事でもないし、素直に頷く。 「そう……」 素っ気ない返事が返ってくると私は掃除を再開した。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加