『おひめさまが泣いた』

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「帰る、さようなら」 彼に背を向けて歩き出す。 「考えといて、さっきの話」 いつも通りの彼の声が聞こえる。 流石の私も堪忍袋の緒が切れては自分を止められず、一発怒鳴ってやろうと振り返えった。 「だから…っ!」 夕暮れに照らされた彼の顔は、 黒い艶やかな髪の合間から見える眉間の皺。 困ったような悲しそうに下がる眉。 薄く笑みを象る唇。 「返事、待ってるから」 ああ、なんて――― 泣きそうな顔なんだろう 『おひめさまが泣いた』 (……っ、卑怯だ!あんな顔!でも……) (きらいだから、好きなんだよ)
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