『触れられない境界線』

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俺とソレが出逢ったのは俺が高校3年の頃。 高校生活最後の卒業式。 式が終わって涙してるみんなから少し離れて、俺は中庭に立っていた。 人並みに青春を謳歌したことを思い出しながら校舎を見上げて、まだ咲かない桜の木の蕾に溜め息を吐いた。 不意に人の気配を感じ横を向くと少し離れたところで同じ様に校舎を見上げる髪の長い女性に気が付いた。 俺から見えるのは彼女のすらりと長い足と風になびく綺麗な髪。 「桜、まだ咲きませんね」 何となく、独り言のように彼女の背に話しかけてみる。 暫し無言が続き、俺はみんなの元に返ろうかと足を踏みだそうとした瞬間。 「ええ、きっと足りないのね」 凛とした声が返ってきた。 慌てて振り向くもその場に彼女の姿はもう無かった。 その時は怖いという感情はなく、ソレが何だったのか確かめる術もなかった。 その3日後からだ。 視線と気配を感じるようになったのは。
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